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最近、気功にはまっています。気功といっても、公園でご老人たちが和気藹々と楽しんでいる健康体操のような気功とは少し趣が異なります。私が現在取り組んでいる行法は、800年前に遡る道教の一派「太一教」(たいいつきょう)に由来する学問のなかで伝えられたある種の気功法ともいうべきもので、深遠で神秘的な精神修養です。気功法のなかでも、道教、仙道(内丹)、仏教の要素が濃い種類の気功になると思います。
興味を持ったきっかけは、この動画を観たことでした。(うる覚えですが、子供の頃にTVで観たような気がする)
太一教は、一悟真人と尊称される、蕭抱珍(しょう・ほうちん。1067~1166)という開祖が伝えた教派です。萧抱珍は、北宋の第五代皇帝 英宗(えいそう)の治世、治平(元号1064~1067)4年の旧暦3月24日、汲県(現在の河南省衛輝市)で生まれたそうです。萧抱珍の教団は、女真族の金王朝 第三代皇帝 熙宗(きそう)の治世、天眷(てんけん/元号1138~1140)の頃に、「太一道」として創設されたそうです。萧抱珍は、戦乱の為に困窮する民衆を救うために、放置された屍を葬ったり、疫病や災害を避ける呪術を行い、またたく間に数万の信者を得て、金王朝の宮廷から信頼され伝道したといいます。
太一教では、正一教の前身である「天師道」教団の慣例を模倣し、歴代祖師は、開祖の姓「蕭」を名乗りました。
初代 蕭抱珍 「一悟真人」位1141?-1166
二代 蕭道熙(しょう・どうき)「重明真人」位1166-1186
(萧抱珍の弟子、韓寿の息子、韓道熙) 五代皇帝金世宗(せいそう)の信任を得る。世宗が「万寿碑」の建立を命じたため、名声を博した。信者は、三東省、河北省、東北地域一帯に広がった。
三代 蕭志忠(しょう・しちゅう)「虚寂真人」位1186-1216
(萧抱珍の弟子、王守謙の息子、王志忠)
四代 蕭輔道(しょう・ほどう)「中和真人」位1216-1252
五代 蕭居寿(しょう・きょじゅ)「貞常真人」位1252-1280
六代 蕭全祐(しょう・ぜんゆう)「純一真人」位1280-1318?
七代 蕭天祐(しょう・てんゆう)「崇玄真人」位1318- ?
ウィキペディアの「太一教」によると、”第7代目以降には、次第に正一教や全真教に吸収されて行った。”とあります。また、広岡 純 著「元極功入門」(学研)によれば、”7代目頃から衰微し北方から揚子江流域に移って布道していたが、その後民間に散逸したといわれる。”とのこと。
今、私が二冊の書物(一冊は学研から出ている「元極功入門」もう一つはその元になっている「張志祥伝 元極学 混沌初開法(李 大川 編訳)」から学んでいる、張志祥老師が公開された功法は、民間に散逸した系統にあたります。民間に流布した太一道はあまり広がらず、肉親の間で口伝心授(ことばで伝え、心で悟る)の形で継承されていたということです。
蕭抱珍が開いた太一教は、「太一三元法籙」(たいちさんげんほうろく)という書物に基いて教理を説いたそうです。張老師の著書によれば、”元来、「太一三元法籙」の三元は、天・地・水の三官を信仰することを指し、それは早期の天師道からの信仰です”とあります。蕭抱珍は、天師道(教)から三元法籙を継承し、そこから更に「太一無字真経」を悟ったそうです。
普善禅師という禅僧が、太一教の、「太一三元法籙」と「太一無字真経」を継承し、そこに内丹派の要素(体内の気を巡らせて、不死の霊薬その他の神秘的な効能を示す何ものかを作り出す行法)を取り入れて「元極道」を開いたそうです。そして普善禅師は、「太一無字真経」を「元極無字真経」に発展させたそうで、これが十字真言と呼ばれる、「アン・ジン・ミー・ピー・ジー・パー・ヤー・イン・ホア・ディン」という音声であり、元極功法で特に重視される、訣(けつ/真言のようなもの)になります。
その普善禅師に師事した張老師の先祖から、張老師の曽祖父→祖父→母親へと三代に継承され、張老師は母親からこの口伝の教えを学び、幼い頃から修練に励み、母親からの紹介で親戚の叔父さんに師事し、その叔父さんから更に、徐 道長 という名の山奥の古廟に住む先生を紹介されて修行したそうです。
張老師は民間に伝承された「元極道」(遡ると、天師道の影響を受けた12世紀に興った道教一派の「太一道」)の四代目の祖師です。
張志祥老師の生い立ちと「元極学」の完成、その発展には、目を見張るものがあるのですが、そのことについてはまた別の機会に投稿します。
ということで、今回は、私がハマッている気功についての紹介でした。
P.S.
なんだか歴史の授業みたいな記事を書いてしまいましたが、伝統ある学問や宗教については、やはり正確な歴史をおさえて置きたいという思いがあり、長文になってしまいました。
怪しい宗教に取り込まれたりはしていませんので、ご安心下さい。
私個人は怪しい人かもしれませんが(否定できる自信がありません)、当店では、特定の宗教への勧誘などは一切行っておりません。
小室博史