事実は奇なり

子供の頃


両手を向かい合わせて


貝のような形にして


気を練っていた


僕の周りは


神秘に満ちていた


バンボロキョンシー


葉巻型UFO


北斗有情拳


日蓮正宗の儀式を受けさせられた時だっただろうか


タクシーの車窓から


「亀戸にオウムはいらない!」と書かれた看板が見えた


鸚鵡を飼っている人がいるのかと思った


中学生になって


鸚鵡じゃなくて


ばい菌を育てていたんだと知った


お茶の間に月のエネルギーを送信する占い師


妙な透明感があって


なかなかの美人だった


あの人もヨガをやっていたのだろうか


バーベキューの串を腕に刺す Mr.マリック


超能力者にしか見えなかった


超魔術だと


だいぶ後になって思い返した


火の粉を吹きながら


ハフハフ言いながら


溶かした砂鉄を舌で冷ます


鋳型職人


じゃなくて 気功の達人


不思議なこともあるもんだなーと


毎週のようにつぶやいていた


僕の現実の延長線上に


色々なことをやってのける


色々な意味で真似のできない人々がいた


あれから数十年


僕は占い師になっていた


その前に魔女にもなっていた


だいぶ後で創価学会を辞めていた


タロットはテーブルの上の灰皿のように


見慣れた景色の一部になっていた


プラスチック製のダイスは


スマホの横に並んでいる


絵柄と占星術記号で


復縁の時期を観ているが


南海トラフ巨大地震が来る時期を占う自信はない


ノストラダムスのようにはいかないだろう


そしてまた戻ってゆく


手から出る気が


気になってしょうがない


ケンシロウの指先から


ビームが走り


幼いリンを治したこと


それは事実


張老師の貫頂で


歩けるようになった女性がいたことも


たぶん事実


事実は奇なり


僕はまた貝を作り


あの感覚を思い出す


だだをこねて


親の腕を引っぱり


映画館に引きずり込み


保育園児の弟を泣かせながら


夢中になって観た


『孔雀王』


三上博史が結んでいた


密教の九字印は


学校で「歯磨きガム」を噛んで先生に怒られた武勇伝を持つ


藤井フミヤ似のクラスメイトに教えてもらった


夏休み明けの


あの空を


また見上げている


hiroshi-komuro-1989




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