時代の変化と電話占い


uranaishi-astrolabe


もうかれこれ10年近く、一つの電話占いの企業で鑑定をしてきました。

それ以前に、やはり10年間ほどのあいだ、幾つかの占い企業に籍をおいていました。小さな会社もあれば、老舗の企業もありました。

今居るところが最も長く続いています。


元々自営でサイトを経営している場合は、掛け持ちも許可してくれる会社なんです。

たぶん、私の顔を探しても見つからないと思います。

プロフィールの顔写真を、思いっきりCGで修正されているので。

顔が同定されると、顧客を引き抜かれると思っているんでしょうね。

そういう事情があって、お化けのような顔で鑑定しております。


最近、この電話占い業界に微妙な変化が生じてきているように感じます。

不景気を反映しているだけなのかもしれませんが、おそらく、それ以外にも理由があって。占いに来られるお客様たちが、10年くらい前と比較すると、短時間で要点だけを聴いて受話器を切られる方が多くなってきたように思います。


私は、元々、端的に要点を占い、お客様が後で想起し易い表現で結果をお伝えするスタイルを取っていますので、そもそも長話にはなり難いのですが。それでも10年前は、会話それ自体を楽しむというか、話すことに主眼がおかれたご依頼というか、会話の中で心を打ち明ける為にお越しになられるお客様が、比較的多かったように記憶しています。


これは私なりの分析なのですが、ここ10年程でスマホやPCの通信速度が飛躍的に高速化し、何か気になることがあれば、即座に手元のスマホで検索、youtubeで物を調べることも可能になり、”パパッと調べて、ササッと作業する”そういう場面が明らかに増えてきていると思うのです。


その癖がついているので、電話占いを利用する目的が、「占い師の先生に助言を仰ぐ」から⇒「復縁できるかどうか、彼からいつ連絡がくるのか、何をすればいいのかを知る為」に移り変わってきているのではないかと思うんです。


同じように聞こえるかもしれませんが、前者は人との会話を目的としているのに対して、後者はあくまでも「情報」としての、占い結果を知りたいという、情報自体を目的とする行為です。情報だけ分かれば、こっちのもんなんで、助言とかは無くてOKです的な。


占い師だけが唯一無二の話し相手になってしまい、何十万円、何百万円とつぎ込んで首が回らなくなってしまう例を、以前はよく見かけました。最近は減ってきているのかもしれません。あまり聞かなくなりました。要点だけを聴いて、人によってはいきなりガチャって切る方もいたりします。幼少期にマナーとか常識を親から教わらなかっただけなのかもしれませんが。たぶん悪気はないんだろう、そういうものだと思っているのかも、という同情にも似た、なんともいえない気分になることがあります。


「端的に情報だけを」という時代の要求の変化をポジティヴに受け止めれば、無駄話で散財せずに済むことや、私のような必要なことだけ喋るタイプの鑑定士にとっては、疲れなくていい、という利点があると思います。


でも、行き過ぎたスピード追求思考は、霊的な作業である占いを扱う占い師にとってはやりにくい部分もあります。占い師は経験上、落ち着いたゆとりのある話し方が、相手の精神を鎮め、タロットや八卦の解説をその人に深く理解してもらうことに繋がることを知っています。また、どんな話し方をする相手に影響を受けているかによって、その人自身の喋り方や、コミュニケーションの取り方が変化することもある、ということを弁えています。せっかちで相手の話を遮りながら自己主張ばかりしてしまう癖のある人が、徹底的に相手に喋らせてから、要点を捉えた切り返しのできる人と長く会話をしていると、後者の性質が、前者にうつって行くことがあります。恋人が変ってから、性格が穏やかになったという事例を、見たことがあるかもしれません。そういうことにも影響してくるわけです。恋愛や就活の失敗原因が、実は「話し方」にあるというケースは少なくありません。そうしたことも含めて、占い師は顧客の事情を観なければなりません。


私が最初に所属した老舗の占い企業では、優れた鑑定士でもある女性社長から、「話し方」を根気良く教わったものです。その先生は、始めは台所に電話機をおいて、タウンページに小さな広告を載せ、一代で電話占いのノウハウを極め、多数の占い師を訓練して世に送り出してきた方です。その先生が重視していたのは、占術それ自体の技術というよりも、むしろ「会話」の方だったのです。


その先生は日本全国の様々な方言を自在に操ることができるらしく、色々な地域のお客様と話しているうちに、自然と地方の発音や喋り方を真似して、身についてしまったのだそうです。そして、その先生の訓練方法は、抜き打ちで普通のお客様に成りすまして鑑定士に依頼をしてくるんです。こちらは気がつきませんので、普通に占います。それが終わると、先生が正体を現し、懇切丁寧にダメだししてくれます。その訓練のお陰で、私はどこの占いセミナーに通っても習うことはできない、占い師に必要な会話のノウハウを学ばせて頂きました。今でもその先生には感謝しています。


ニュースキャスターには、ニュース報道に相応しい話し方と速度があるように、占い鑑定にも、相応しい会話の速度というものがあります。たとえお客様にその知識が無くても、鑑定士はお客様の精神的な波長を鑑定に相応しい状態へと誘導することができます。お互いの波長を整えることで占術自体の精度も上がる事を知っています。経験豊かな占い師は、それをほとんど無意識的に本能的にやっているのです。


占いの結果をお伝えする際、まずどういう兆しが現れていて、それが何を意味するのか、どういう理由から、貴女は次にこう動くべきで、そう動くべきではないのか。複数の選択肢から選んだ場合、それがどういう展開を生み出すのか、それに対する心の準備は・・・などなど、占い師は結果に現れた全情報を、お客様に理解され易い順序で説明します。


ところが、要点「のみ」、結果「のみ」を知りたいという、急いた心で、鑑定を受けてしまう方は、折角、占い師が詳細して差し上げようと考えている立体的な情報を、有機的に理解する機会を逃してしまうことが多いのです。


占術の結果は、そこにある複数の助言と有機的に結びついているので、結果だけをお伝えしても意味を成さないことも少なくありません。


”情報だけを端的に素早く知りたい!”

”できれば5分以内でお願いします”


高速スマホ世代にとって、無理もない発想でしょう。

しかし、こうした高速度な文化はここ数年のあいだ、人類にもたらされたものに過ぎず、我々人間の心というものは、昔も今も複雑怪奇なもの。

そして占いによって導き出された内容を、どんなに早口で伝えたとしても、瞬時に頭の中に詰め込んで整理できる人は稀です。


youtubeでお料理の作り方を調べるのとは違い、占いと云うのは、十分な状況把握に基いて、精神統一して行う、ある種の神事なのです。

占いを、単に情報供給源として利用するということは、ある意味、不可能なのです。

もちろん占術によっては、AIがデータから導き出すことは十分できるのですが、殊に人間が霊感を用いて行う卜術においては難しいと思います。

占い師は結果だけを情報として投げるのではなく、占い結果の受けとめ方を顧客に教えてあげなくてはなりません。受け取り方次第で、占いを現実に活かせるかどうかが、変ってきてしまうからです。


そんな時代の流れの変化を感じつつ、私は特に鑑定スタイルを変えるということもなく、極力端的に、適切な表現で結果をお伝えする、対策も示す、ということを心がけています。


無駄な時間をかける意味はないけれど、スピードの速さだけを追求するのも違う。最低限、霊感を用いてお客様にとって有用な情報を列挙するのに必要な時間というものがあり、それは省略することはできない。というのが私の基本的な考え方です。


一方で、速く、速く!と急いてしまう世代もあり、彼らに対しては、世代特有の傾向として理解してあげることも必要。


でも、これは愚痴になってしまうかもしれませんが、占い業界の裏話をするとですね、所属している企業で「端的で素早く占ってくれるのでありがたいです!」という様なコメントを頂くことが時々あるのです。そうすると、所属企業の意向で「非公開」扱いにされてしまうんです。

お客様が、わざわざご感想コメントを書いて下さった文章で、

しかも、好意的な内容、明らかに喜んで頂けている様子なのに・・・。


(・◇・ )


どうしてか、分かりますか?。

企業はできるだけ長話をして欲しいからです。


素早く的確に占うことは、お客様に喜ばれることに繋がる

という意識を彼らは広めたくないわけです。


顧客目線ではなく、どこまでも利益に目が行ってしまうのでしょう。

有名どころの占い企業でも、こんな感じです。


(^-^;)


企業の経営者たちは、鑑定の現場を聴いていないから、時代の流れも、世代による違いも、ナーンニモ考えていないんだろうなあ、とつぶやくこの頃です。




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